人工甘味料アスパルテーム・スクラロースは安全?最新の科学的見解

アスパルテームとスクラロースの安全性を比較するノンアル飲料の缶と研究資料 ノンアル
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スーパーのノンアル棚で缶を裏返すと、原材料の末尾に「アスパルテーム」「スクラロース」と書かれている商品が本当に多い。最近、店頭で20本ほど手に取って確認したら、糖質オフ系のノンアルビール12本のうち9本にどちらかが入っていました。

「人工甘味料って結局やばいの?」と読者の方から月に何件もメッセージが届きます。2023年にWHOがアスパルテームを「ヒトに対して発がん性の可能性がある(グループ2B)」に分類したニュース以降、不安は加速しました。

結論から書くと、現時点の科学的見解では、通常のノンアル飲料を1日数本飲む程度なら健康リスクは小さいです。ただし「小さい」と「ゼロ」は違うので、何がわかっていて何がわかっていないのか、最新の研究をもとに整理していきます。私自身、業界に20年近くいて甘味料の評価書を読み続けてきた立場として、感情論ではなくデータで話します。

そもそもアスパルテームとスクラロースって何者なのか

2つとも「高甘味度甘味料」と呼ばれるグループに属します。砂糖の数百倍の甘さがあるので、ごく少量で十分な甘さが出る。だからカロリーをほぼ加えずにノンアル飲料に甘みをつけられる。これがメーカー側が使う最大の理由です。

アスパルテームは1965年に米国で発見されたペプチド系の甘味料。砂糖の約200倍の甘さで、体内でアミノ酸(フェニルアラニン、アスパラギン酸)とメタノールに分解されます。普通の食品成分と同じ代謝経路を通るのが特徴です。

スクラロースは1976年にイギリスで開発された塩素化糖類。砂糖の約600倍の甘さがあって、体内ではほとんど分解されずに大部分が便と尿でそのまま排出されます。熱に強いので加熱調理にも使えて、その安定性から世界中で採用が広がりました。

ノンアル飲料で使われる理由

ノンアルビールやノンアルチューハイには、ビール特有のホップ苦味やアルコール感を補うために「コクと甘み」が必要です。でも砂糖を入れるとカロリーと糖質が跳ね上がる。糖質ゼロを謳う以上、砂糖は使えない。

そこで微量で甘みを足せる人工甘味料の出番になります。麦芽糖や果糖との見分け方を整理した過去記事でも触れましたが、原材料表示の末尾に書かれていれば添加量はごくわずか。1缶350mlあたり数十mgのオーダーです。

ちなみに「酵母エキス」や「香料」と同列に並ぶ存在で、ノンアル特有の味づくりに欠かせない裏方になっています。

2023年のIARC評価が引き起こした騒動を整理する

2023年7月14日、WHO傘下のIARC(国際がん研究機関)がアスパルテームを「グループ2B:ヒトに対して発がん性の可能性がある」に分類しました。同日、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)は許容1日摂取量(ADI)を従来通り体重1kgあたり40mgで維持。

このとき多くのメディアが「アスパルテームに発がん性!」と報じて大騒ぎになったんですが、これ、かなり誤解を含んだ報道でした。

グループ2Bの本当の意味

IARCの分類は「ハザード(潜在的な危険性)」を示すもので、「リスク(実際にどれだけ危険か)」とは別物。グループ2Bにはアロエベラ、漬物、ワラビなども入っています。要するに「証拠は限定的だけど、可能性を完全に否定できるほどではない」というレベル。

同じグループ1(明確な発がん性あり)にはタバコ、アルコール、加工肉、太陽光が入っています。アスパルテームと加工肉を同じ感覚で語るのは無理がある、と理解してもらえれば。

IARC分類意味
グループ1ヒトに対して発がん性ありタバコ、アルコール、加工肉
グループ2Aおそらく発がん性あり赤身肉、夜勤シフト勤務
グループ2B発がん性の可能性ありアスパルテーム、漬物、アロエベラ
グループ3分類できないカフェイン、お茶

JECFAがADIを変えなかった意味

同じ日にJECFAが「ADIは40mg/kg体重/日のままで問題なし」と発表したことの方が、実は重要なんです。リスク評価の専門家集団が「通常の摂取量で健康影響を起こす証拠はない」と判断した、ということなので。

体重60kgの大人なら1日2,400mgまでが目安。これはダイエットコーラに換算すると約12缶分、ノンアルビールなら数十本飲んでも届かないレベルです。現実的にここまで摂取することはまずない。

スクラロースの安全性評価はどうなっているか

スクラロースは現時点でIARC分類に含まれていません。ADIは体重1kgあたり15mg/日(JECFA、EFSA、FDAいずれも同じ)。これは体重60kgで900mg、ノンアル飲料に換算すると数十本相当です。

2023年にラットでの慢性投与試験(イタリアのラマツィーニ財団)で白血病リスクの増加が報告されましたが、用量がADIをはるかに超える条件でのデータで、ヒトへの外挿は難しいというのが各国規制当局の見解です。EFSA(欧州食品安全機関)は2024年に再評価をスタートしていて、新しい結論が数年以内に出る予定。

注意点としては、180℃以上の高温加熱で塩素化合物に分解する可能性が指摘されています。ノンアル飲料は冷たい状態で飲むのでまず問題になりません。ただ熱湯で割ったり、料理に使ったりする場合は気にする価値があります。

腸内細菌への影響というもう1つの論点

ここ数年、人工甘味料が腸内細菌叢を乱す可能性を示す研究がいくつか出ています。2022年のCell誌の論文(イスラエルのワイツマン研究所)では、スクラロースとサッカリンを2週間摂取したヒトで、耐糖能の悪化と腸内細菌の変化が観察されました。

ただこの研究は被験者わずか120人で、用量も多め。再現性をめぐる議論も続いていて、まだ「確定した健康リスク」とは言えない段階です。ノンアルビールでお腹を壊す原因を掘り下げた記事でも触れましたが、人工甘味料に過敏な人は確実に存在するので、自分の体の反応を観察する姿勢は大事だと思ってます。

ADI(許容1日摂取量)を実際の飲み物で換算してみる

抽象的な数字だとピンと来ないので、現実的な摂取量で計算してみます。体重60kgの成人で計算しました。

甘味料ADI(60kg換算)ノンアル1缶あたり推定量ADI到達本数の目安
アスパルテーム2,400mg/日約30〜80mg30本以上
スクラロース900mg/日約20〜50mg20本以上
アセスルファムK900mg/日約20〜40mg20本以上

ノンアル1缶あたりの添加量は商品によってばらつきがあるので幅で示しています。製品の正確な数値はメーカーが公表していないことが多いんですが、推定値で計算してもADIに届くのはほぼ不可能。1日3〜5本飲む程度なら、ADIの数%にすら達しません。

ちなみにJECFAが設定するADIには、すでに100倍の安全係数がかけられています。動物実験で影響が出なかった最大量の1/100に設定されているので、ADI自体がかなり保守的な数字。多少超えたから即危険、というものではありません。

フェニルケトン尿症と妊娠中の摂取について

アスパルテームには1つ明確な禁忌があります。フェニルケトン尿症(PKU)という先天性代謝異常を持つ人。アスパルテームが分解されて出るフェニルアラニンを代謝できないので、絶対に避ける必要があります。

日本の食品表示法でも、アスパルテーム使用食品には「L-フェニルアラニン化合物」の表記が義務付けられています。新生児マススクリーニングで把握されているので、該当者は自覚しているはず。

妊娠中・授乳中の判断

2022年にフランスの大規模コホート研究(NutriNet-Santé)で、人工甘味料を多く摂取する妊婦の早産リスクがやや高いという報告が出ました。決定的なデータではないものの、念のため避けたい人が増えています。

個人的な見解として、妊娠中・授乳中はあえて人工甘味料を多用する必要はないと思っています。ノンアルビールを楽しみたいなら、原材料表示を確認して甘味料無添加のものを選べばいい。麦芽とホップだけで作られている商品も増えてきました。

具体的にどんな選び方をすればいいかは香料や添加物全般の安全性を整理した記事と合わせて読んでもらうと、自分なりの判断基準が作れると思います。

ノンアル飲料で人工甘味料を避けたい人の選び方

「科学的には問題ないと言われても、なんとなく避けたい」という気持ち、すごくよくわかります。私も普段の家飲みでは、無添加系の銘柄を選ぶことが多い。味の好みの問題でもあります。

人工甘味料が入っていない商品の見分け方は単純で、原材料表示に「アスパルテーム」「スクラロース」「アセスルファムK」「サッカリン」が書かれていなければOK。「甘味料(〇〇)」という表記もチェックポイント。

脱アルコール製法の銘柄は無添加が多い

実際にビールを醸造してからアルコールを抜く「脱アルコール製法」の商品は、もともと麦由来の甘みがあるので人工甘味料を足す必要が少ない。ドイツ産のヴェリタスブロイ、ヒューガルデン・ゼロ、龍馬1865などが代表例です。

逆に、原料を後から混ぜる「調合製法」のノンアルビールは、ビール感を出すために甘味料・香料・酸味料・苦味料を組み合わせるケースが多くなります。脱アルコール製法の3技術を比較した記事を読むと、製法と添加物の関係がよりクリアになると思います。

無添加にこだわるなら、海外産の脱アルコール製法銘柄をまず試してみてください。麦のコクで自然な甘みが感じられて、後味もすっきりしています。

天然甘味料への置き換えという選択肢

最近のトレンドとして、人工甘味料の代わりにステビアやエリスリトール、羅漢果(ラカンカ)抽出物を使う商品が増えています。これらは植物由来で「天然甘味料」と呼ばれるグループ。

ステビアは南米原産のキク科植物の葉から抽出される甘味料で、砂糖の200〜300倍の甘さ。エリスリトールはトウモロコシなどから発酵で作られる糖アルコール。どちらも血糖値をほぼ上げないという特徴があります。

ただ「天然=絶対安全」というのも単純すぎる話で、ステビアは過剰摂取で血圧低下や腸内環境への影響が報告されています。エリスリトールも2023年のNature Medicine誌の研究で心血管リスクとの関連が示唆されました。要するに何にせよ、適量で楽しむのが大事。

甘味料由来カロリー主な懸念
アスパルテーム合成(アミノ酸由来)4kcal/g(使用量微少)IARC 2B、PKU禁忌
スクラロース合成(砂糖由来)0kcal/g腸内細菌への影響、高温分解
ステビア植物(葉由来)0kcal/g苦味、過剰摂取で血圧低下
エリスリトール発酵(糖アルコール)0kcal/g心血管リスクの示唆、下痢

結局、私はどう向き合っているか

業界で20年近く甘味料の議論を追ってきた立場として、自分のスタンスを正直に書きます。アスパルテームもスクラロースも、適量なら避ける必要はないと思っています。ADIに対して現実の摂取量は1〜2桁少ない。リスクを語るならむしろアルコールや塩分の過剰摂取の方が桁違いに大きい。

ただ、毎日3缶以上を何年も続けるような「習慣的な大量摂取」は別の話。腸内細菌や代謝への長期影響はまだ完全にはわかっていません。だから自分の場合、人工甘味料入りのノンアルは週に2〜3本、それ以外は無添加系の銘柄を選んでいます。

子供(10歳)には基本的に人工甘味料入りの飲料は与えません。発達期の腸内細菌への影響データがまだ十分でないからです。これは科学というより、親としての慎重さの問題かもしれない。

大事なのは、ニュースの見出しに振り回されないこと。IARCの2B分類は「漬物と同じカテゴリ」だし、研究データを読むときは用量と試験設計を必ず確認してほしい。「発がん性」という言葉だけが独り歩きしてる現状は、業界にいる人間として歯がゆいと感じてます。

よくある質問

Q1. アスパルテームは結局、発がん性があるんですか?

IARCは「可能性はある(グループ2B)」としていますが、これは漬物やアロエベラと同じカテゴリで、限定的な証拠を意味します。同時にJECFAは許容摂取量を据え置きにしていて、通常の摂取量での健康影響を示す証拠はないと結論づけました。日常的にノンアル1〜3本を楽しむ範囲なら過度な心配は不要です。

Q2. スクラロースが体に蓄積するという話は本当ですか?

スクラロースは体内でほとんど代謝されず、摂取量の85%程度が便で、残りが尿で排出されます。脂肪組織に長期蓄積するという主張は、ヒト試験では確認されていません。ごく一部が体内に留まる可能性は指摘されていますが、健康影響に直結する量ではないというのが現在の評価です。

Q3. 妊娠中は人工甘味料入りのノンアルを避けるべきですか?

各国の規制では妊娠中の摂取は禁止されていません。ただし2022年のフランスのコホート研究で早産リスクとの弱い関連が示唆されているので、念のため避けたい気持ちは理解できます。麦芽とホップだけで作られた無添加銘柄や、脱アルコール製法のドイツ産ノンアルを選ぶのが安心です。

Q4. 人工甘味料を摂ると逆に太るって本当ですか?

カロリー自体はほぼゼロなので、甘味料が直接太る原因にはなりません。ただ強い甘さに慣れることで甘いものへの欲求が高まり、結果的に食事量が増えるという行動学的な仮説はあります。あくまで間接的な話で、ノンアル1本飲んだら太るというような単純な因果ではありません。

Q5. 子供が人工甘味料入りのノンアル飲料を飲むのは大丈夫?

ADIは体重1kgあたりで設定されているので、子供は許容量が大人より少なくなります。体重20kgの子供だとアスパルテームのADIは800mg/日。短期的に1〜2本飲む程度では問題になりませんが、発達期の腸内細菌への長期影響はまだデータが不十分です。子供の常用は控えめにするのが私のおすすめです。

Q6. 無添加のノンアルビールはどこで買えますか?

カルディや成城石井、輸入食品店でドイツ産のヴェリタスブロイ、龍馬1865などが手に入ります。最近は大手スーパーのプレミアム棚にも並ぶようになりました。原材料表示で「麦芽、ホップ、水」だけのものを選べばOK。ネット通販なら銘柄数も豊富で、ケース買いなら1本150円前後で手に入ります。

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