ノンアル飲料の表示ルール|景表法・健康増進法の規制内容

ノンアル飲料の表示ラベルを虫眼鏡で確認する様子 ノンアル
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スーパーのノンアル棚で、缶の裏面を15分くらいじっと見比べていたことがあります。「カロリーゼロ」と書かれた缶と、「カロリーオフ」と書かれた缶。並べてみると、片方は実は1.8kcal入っていて、もう片方は0kcal表記なのに4kcalちょっとある。どちらも嘘ではない。なぜならこの表記は、法律で「ここまでなら言っていい」というラインが決められているからです。

ノンアル飲料の表示は、ものすごく細かいルールの上に成り立っています。景品表示法、健康増進法、食品表示法、酒税法。複数の法律が層になっていて、メーカーは毎回この網をくぐり抜けて「言えること」と「言えないこと」を線引きしている。

この記事では、ノンアル飲料のラベルや広告で見かける表示が、どの法律のどの条文に縛られているのかを、業界に長くいる立場からまとめます。読み終わる頃には、店頭で缶を手に取ったときに「あ、この表記はギリギリのラインだな」と気づける目になるはずです。

ノンアル飲料の表示を縛る4つの法律

まず全体像から。ノンアル飲料の表示は1つの法律で完結しません。メーカーの法務部や品質保証部の人と話すと、表示1つ決めるのに最低でも4本の法律を横断チェックしているそうです。

主役になるのは「景品表示法(景表法)」と「健康増進法」の2つ。景表法は消費者庁が所管していて、嘘や誇大な表示を取り締まる法律。健康増進法は厚労省所管で、栄養成分や健康効果の表示ルールを決めています。さらに食品全般の表示は「食品表示法」、お酒との線引きは「酒税法」がカバーする。

面白いのは、この4本の法律が時々お互いに矛盾しそうな要求をしてくることです。景表法は「事実と違うことを書くな」と言うけど、健康増進法は「事実でも、こういう書き方はダメ」と言ってくる。だからメーカーは、事実を曲げずに法律にも触れない「狭い言葉の通り道」を探し続けることになります。酒税法との関係は1%未満でも酒類になる境界線の話で詳しく触れているので、そちらも合わせて読むとイメージが立体的になります。

4つの法律が見ているもの

法律名所管主に規制する内容
景品表示法消費者庁優良誤認・有利誤認・不当表示全般
健康増進法厚労省・消費者庁栄養成分表示、健康効果の虚偽誇大広告
食品表示法消費者庁原材料、アレルゲン、製造者などの基本表示
酒税法国税庁アルコール度数とお酒の定義、商品名規制

この4つの中で、消費者が広告を見て「これ本当?」と感じる感覚に一番関わるのが景表法と健康増進法。なのでここから先は、この2つを軸に深掘りしていきます。

景品表示法が縛る「優良誤認」と「有利誤認」

景表法の中身を一言で言うと「消費者が勘違いするような表示はダメ」というルール。具体的には「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の2種類があります。

優良誤認は、品質や規格が実際より良く見える表示のこと。たとえば実際は調合製法で作ったノンアルビールに「ドイツ伝統の発酵製法で醸造」と書いたらアウト。事実と違うからです。

有利誤認は、価格や取引条件が実際より有利に見える表示。「他社の倍の量」と書いたのに実際は1.2倍しかなかった、みたいなケースです。ノンアル業界で言うと「業界唯一のプリン体ゼロ」と書いておきながら他社にも同等品があった、みたいな場合に該当します。

「ビール」と書けない理由も景表法

ノンアルコールビールのパッケージをよく見ると、メーカーは絶対に「ビール」と書かず「ビールテイスト飲料」「ビアテイスト飲料」と表記しています。これは酒税法上の「ビール」の定義(麦芽比率と発酵を満たす酒類)から外れるため、ビールと書くと優良誤認になるから。ノンアルコールビールが「ビール」と呼べない法律の理由でもっと細かく解説しているので、興味があれば。

同じく「ワインテイスト飲料」「日本酒風味」みたいな婉曲表現も全部この流れ。メーカーが回りくどい言い方をしているのは、嫌がらせではなく法律で縛られているから、と理解すると見え方が変わります。

健康増進法が許す表現・禁じる表現

健康増進法は、食品の健康効果に関する表現を制限する法律。ここが一番厳しい。「飲むと痩せる」「肝機能が良くなる」みたいな医薬品的な表現は、たとえ事実でも基本的にNGです。

例外として、3つの制度の枠内でだけ健康効果を語れます。特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品。この3つは、それぞれ国が認めたフォーマットの範囲内でだけ「〇〇の機能があります」と書ける仕組み。

たとえば「内臓脂肪を減らすのを助ける」というノンアルビールの広告文。これは機能性表示食品の届出を出して、根拠論文を提出して、消費者庁に受理されて初めて書けるんです。私の知る限り、メーカーの開発部は届出書類を作るのに半年から1年かけてます。

3つの保健機能食品制度の違い

制度審査表示できる例
特定保健用食品(トクホ)国が個別審査「血糖値が気になる方に」
栄養機能食品規格基準型(自己認証)「ビタミンCは皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素」
機能性表示食品事業者責任で届出「内臓脂肪を減らすのを助ける」
一般のノンアル飲料制度外健康効果に触れる表現は原則不可

つまり「健康に良い」と書きたいなら、メーカーはまずどの制度に乗るかを決めて、その制度の枠の中でだけ語る。枠の外で「健康にいいですよ」と言ってしまうと、健康増進法65条の虚偽誇大広告に引っかかります。

「ゼロ」「無」「低」の数値基準

「カロリーゼロ」「糖質ゼロ」「プリン体ゼロ」。ノンアル飲料のラベルで一番よく目にする表記です。でも、ゼロと書いていても完全な0ではないケースがあります。これは健康増進法に基づく食品表示基準で、栄養成分ごとに「ゼロ表示できる上限値」が決められているからです。

たとえばカロリーは、100mlあたり5kcal未満なら「ゼロ」と表示してOK。350ml缶なら最大17.5kcalまで入っていても「カロリーゼロ」と書けてしまう計算です。「ノンアルなのにカロリーあるじゃん」と感じるのは、実はこの基準のズレが原因だったりします。

主な栄養成分のゼロ基準

栄養成分「ゼロ」表示の基準(100mlあたり)「低い」「控えめ」の基準
エネルギー(カロリー)5kcal未満20kcal以下
糖質0.5g未満2.5g以下
糖類(単糖類・二糖類)0.5g未満2.5g以下
脂質0.5g未満1.5g以下
ナトリウム5mg未満120mg以下

注意したいのが「糖質ゼロ」と「糖類ゼロ」の違い。糖質は炭水化物全体から食物繊維を引いたもので、糖類はそのうちの単糖類と二糖類だけ。糖類ゼロでも、麦芽由来のオリゴ糖などが入っていれば糖質はそれなりにある、ということが普通に起こります。

糖質と糖類の細かい話は麦芽糖・果糖・人工甘味料を見分ける記事でも触れてるので、興味あればぜひ。

アルコール度数表示の落とし穴

「アルコール度数0.00%」と「0.0%」。この小数点1桁か2桁かが、実は法的にも実態的にも別物です。これも景表法の優良誤認に関わる重要な論点。

0.00%表記は、検出限界(LOD)以下、つまり国の定める測定法でアルコールが検出されないという意味。一方0.0%は、四捨五入して0.0%に丸まる範囲で、実際には最大0.05%未満程度のアルコールが入っている可能性がある。商品名は同じ「ノンアル」でも、ここの実態が違うんです。

運転前や妊娠中の方は、ここの違いを知っているかどうかで選び方が変わるはず。0.00%と0.0%の違いの記事に細かく書いてあるので、合わせて読むと納得感が増します。

「ノンアルコール」という言葉自体に法的定義はない

意外に思われるかもしれませんが、「ノンアルコール」という言葉そのものには明確な法的定義がありません。酒税法では「アルコール分1%以上」が酒類なので、その裏返しで「1%未満」が非酒類というだけ。0.5%でも0.9%でもノンアルと名乗れる余地が残ります。

業界の自主基準として、大手メーカー各社は「アルコール0.00%(検出限界以下)」を「ノンアル」、0.5%前後を「微アルコール」と区別して打ち出しています。でもこれは自主ルールであって法律ではない。だから海外輸入品で0.4%なのに「ノンアル」と書いてある商品が混ざる、というケースが普通に起こります。

広告・SNSでメーカーがやれないこと

パッケージだけでなく、TVCM、Web広告、SNS投稿、ECサイトの商品説明、これら全部が景表法と健康増進法の対象です。「広告」と認められれば媒体は問われません。インフルエンサーがメーカーから提供を受けて投稿する場合も、ステマ規制(2023年10月施行)の対象になります。

具体的にメーカーが広告でやれないこと。「飲むだけでダイエット」「肝臓を守る」「不眠が改善」みたいな医薬品的効能は当然NG。ビフォーアフター写真で痩せた印象を与えるのも、根拠がなければアウト。「業界No.1」「最も売れている」も、調査範囲と時期を明示しないと有利誤認になる可能性があります。

違反した場合のペナルティ

景表法違反だと、消費者庁から措置命令が出され、再発防止策の公表が義務になります。さらに2016年から課徴金制度が導入されていて、対象売上の3%を国に納める。健康増進法違反は、是正命令を経て従わない場合は罰金や懲役という重い処分もあり得る。

実際に大手飲料メーカーが景表法違反で措置命令を受けた事例は過去に複数あり、その後ブランドイメージの回復に何年もかかったケースもあります。だから法務部は表示1つに対して、複数人で何度もチェックを回す。

消費者目線でチェックすべき4つのポイント

ここまで法律の話を書いてきましたが、結局のところ消費者として何を見ればいいのか。私が普段店頭でチェックしているのは次の4つです。

  • アルコール度数の小数点桁数(0.00%か0.0%か)
  • 「機能性表示食品」「特定保健用食品」のマークがあるか
  • 「ゼロ」「無」表記の根拠(裏面の栄養成分表示と照合)
  • 原材料名の順番(量の多い順なので、何がメインかわかる)

とくに原材料表示は情報量が多い。「果糖ぶどう糖液糖」が最初に来ているノンアルカクテルは、要するに砂糖水ベースだということ。「麦芽、ホップ」が頭にあるノンアルビールは本格派。表示順は食品表示法で「重量順」と定められているので、ここを読むだけで中身の方向性がわかります。

原材料表示の読み方そのものは原料表示の読み方完全ガイドで1記事まるまる使って解説しているので、合わせて読んでもらえると本当に立体的にわかります。

疑わしい広告に出会ったら

「これ言い過ぎでは?」と感じる広告に出会ったら、消費者庁の「景品表示法違反被疑情報提供フォーム」から情報提供できます。消費者の通報が措置命令につながった例は実際に存在する。表示ルールを健全に保つには、メーカーだけでなく消費者の目も必要、ということです。

よくある質問

Q1. 「ノンアルコール」と「アルコール0%」は同じ意味ですか?

厳密には違います。「ノンアルコール」は酒税法上の酒類(1%以上)に該当しないという意味で、0.5%や0.9%でもノンアルと名乗れる余地があります。一方「0.00%」は検出限界以下、つまり国の測定法で検出できない水準。妊娠中や運転前に飲むなら「0.00%」表記の商品を選ぶのが安心です。

Q2. 「カロリーゼロ」なのにカロリーが書いてあるのはなぜですか?

食品表示基準で「100mlあたり5kcal未満」ならゼロと表示できるルールがあるからです。たとえば100mlあたり4kcal入っていても、ゼロ表記は合法。350ml缶なら14kcalまで入る可能性があるので、気になる方は裏面の栄養成分表示で実数値を確認してください。

Q3. ノンアルビールに「肝臓に優しい」と書けないのはなぜ?

健康増進法と薬機法に引っかかるためです。「肝臓に優しい」「肝機能を守る」のような医薬品的な効能効果の表現は、トクホや機能性表示食品の届出を出して国に認められない限り使えません。仮にアルコールゼロで肝臓への負担が少ないという事実があっても、その事実を直接書く表現はNGです。

Q4. 機能性表示食品とトクホの違いは?

トクホは消費者庁が個別審査して認可する制度で、ハードルが高く取得に数年と数億円かかることもあります。一方の機能性表示食品は、事業者が責任を持って科学的根拠を届出する形式で、トクホより導入しやすい。ただし届出内容の信頼性は事業者責任。マークの形(許可マークの有無)で見分けがつきます。

Q5. インフルエンサーがノンアルを宣伝するときのルールは?

2023年10月施行のステマ規制により、企業から提供や報酬を受けて投稿する場合は「PR」「広告」「提供」など明確に表示する義務があります。表示せずに自然な感想を装うと、企業側が景表法違反として措置命令の対象になり得ます。インフルエンサー本人ではなく、依頼した企業が罰せられる仕組みです。

Q6. 海外輸入のノンアルにも日本の表示ルールは適用されますか?

日本国内で販売する以上、輸入品も日本の食品表示法・景表法・健康増進法の全てに従う必要があります。だから輸入元の業者が日本語ラベルを貼り直したり、原産国の表記をパッケージに加えたりしている。逆に言うと、これらの日本語表示が雑な輸入品はチェックが甘い可能性があるので、私個人は信頼できる輸入元を選ぶようにしています。

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