調合製法(ブレンド製法)の仕組み|原料を混ぜるだけで本当に美味しい?

ノンアル飲料の調合製法で原料をブレンドする工程イメージ ノンアル
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うちの冷蔵庫には、いま7銘柄のノンアルビールが並んでます。製造方法を比べたくて、毎週ちょっとずつ買い足してたら、こうなりました。並べて気づいたんですが、ラベル裏の原材料欄を見ると、麦芽から作ってるものと、香料と炭酸と糖類で味を組み立ててるものに、はっきり分かれてます。

後者が「調合製法」、業界ではブレンド製法とも呼ばれてる作り方です。ざっくり言うと、お酒を造ってからアルコールを抜くんじゃなくて、最初からお酒っぽい味を組み立てる方法。聞くと身も蓋もない感じがするけど、実はこれが日本のノンアル市場を10年以上引っ張ってきた主力技術です。

「原料を混ぜるだけで本物の味になるの?」という疑問は、業界にいる私も最初は持ってました。でも実際に工場を見て、開発担当者の話を聞いて、自分でも飲み比べを重ねてきた結果、答えは「製法によって決まるんじゃなくて、設計者の腕で決まる」だと今は思ってます。この記事ではその中身を、具体的な銘柄や工程に踏み込んで書いていきます。

調合製法とは何か|醸造しないノンアルの作り方

調合製法というのは、麦芽を発酵させたり、ぶどうを醸したりせずに、最初からアルコールを含まない原料だけを組み合わせてビールやワインのような風味を作る方法です。英語ではブレンディング(Blending)やフォーミュレーション(Formulation)と呼ばれます。

具体的に何を混ぜるかというと、麦芽エキス、ホップエキス、香料、酸味料、苦味料、炭酸ガス、糖類、水。これを大型のタンクに入れて、レシピ通りに比率を合わせて、最後に炭酸を圧入して缶詰めする。発酵工程がないので、仕込みから出荷までが速く、設備もコンパクトで済みます。

日本のノンアルビール市場が立ち上がった2009年以降、各社が次々と参入できたのは、この調合製法のおかげが大きいです。既存のビール工場でも、清涼飲料水のラインでも作れる。だから商品開発のスピードが圧倒的に速くて、毎年新作が出続けてます。

脱アルコール製法との根本的な違い

ここがよく混同されるんですが、調合製法と脱アルコール製法は別物です。脱アルコール製法は、いったん普通にビールやワインを醸造してから、後工程でアルコールだけを抜く方法。真空蒸留、逆浸透膜、薄膜蒸留などの技術が使われます。

違いを乱暴にまとめると、調合製法は「最初からアルコールを入れない設計」、脱アルコール製法は「作ったあとに抜く設計」。原料からして全く別のルートを通ってます。脱アルコール製法の3技術を比較した過去記事で詳しく書いたので、対比して読むと違いが立体的に見えてくると思います。

味の方向性も全然違います。脱アルコール製法は元のお酒の風味を残せる代わりにコストが高くて設備も大きい。調合製法はコスト安く設計の自由度が高い代わりに、本物の発酵由来の複雑さは出しにくい。一長一短です。

調合製法の具体的な工程|タンクの中で何が起きているか

工場の見学に行ったことがある人ならイメージしやすいんですが、調合製法のラインは醸造設備に比べてかなりシンプルです。発酵タンクも貯酒タンクもいらない。代わりに、配合タンクと冷却設備、炭酸圧入装置、充填ラインがあれば作れます。

大まかな流れはこうです。まず脱気した水を配合タンクに張る。そこに麦芽エキス、ホップエキス、香料、酸味料、糖類などをレシピ通りに溶かし込む。pHと比重を測定して、設計値とずれてないか確認する。冷却して炭酸を圧入し、フィルターを通して缶や瓶に充填する。仕込みから缶詰めまで、早ければ半日程度で完結します。

発酵製法だと最低でも2〜3週間、ラガービールなら1ヶ月以上かかるので、サイクルの速さは10倍以上違う。これが商品ラインナップの多さと価格の安さに直結してます。

原料の組み合わせ方|麦芽エキスとホップエキスの役割

調合製法でも、麦芽そのものは多くの製品で使われてます。ただし発酵させずに、麦芽エキスという濃縮液の状態で投入する。これがビール特有のコクや色の元になります。

ホップエキスも同様で、苦味成分のイソα酸を抽出した液体や顆粒の形で加えます。香りを担当するアロマホップオイルも別途使われることが多くて、これが「ホップの華やかな香り」を演出する。本物のホップから抽出したものなので、香料というよりは天然原料に近い扱いです。

ここに乳酸や酸味料で味に輪郭をつけ、糖類で甘みとボディを調整する。香料は本当に補助的で、麦芽とホップだけだと出にくい香りを足すために使われます。完全に人工的な味、というイメージは少なくとも大手メーカーの製品に関しては実態と違います。

調合製法と脱アルコール製法の比較表

項目調合製法(ブレンド)脱アルコール製法
発酵工程なしあり
製造期間半日〜1日3週間〜2ヶ月
設備投資小〜中規模大規模
製造コスト低い高い
味の複雑さ設計次第本物に近い
カロリー0〜30kcal/100ml10〜25kcal/100ml
代表銘柄ドライゼロ、オールフリーヴェリタスブロイ、龍馬1865
価格帯100〜150円150〜250円

この表で何より大事なのは、コスト構造の違いです。調合製法のほうが圧倒的に安く作れる。だから箱買いやコンビニ陳列の主力には、調合製法の製品が並ぶことが多いです。コスパ重視の箱買い銘柄を選ぶときも、調合製法のラインナップが中心になってきます。

逆にプレミアム帯やワイン代替、本格派の輸入ノンアルになると脱アルコール製法の比率が上がる。価格と味の関係には、こういう製法の背景があります。

「原料を混ぜるだけ」で本当に美味しくなるのか

正直に書きます。10年前の調合製法ノンアルは、私の感覚でも厳しいものが多かった。麦汁の濃いベタっとした甘さに、安っぽい香料の輪郭がのっかってる感じ。当時「ノンアルはまずい」と言われたのはこの世代の記憶が大きい。

でもここ5年で、調合製法の完成度は別物になりました。アサヒのドライゼロが定番として残り続けてるのは、年に何度も微調整を重ねて、ビールに近いキレと後味を作り込んできたから。サントリーのオールフリーも、リニューアルのたびに香りの立ち方が変わってます。中身は調合製法でも、職人的な味の設計が入ってる。

「混ぜるだけ」と聞くと簡単そうに聞こえるけど、実際の開発現場では数百種類のレシピを試して、官能評価とパネルテストを繰り返してます。香料を0.01%変えるだけで印象が変わるので、職人技の世界です。料理でいうとブイヨンを最初から組み立てるようなもので、素材を煮込むのとは違う難しさがある。

調合製法が苦手とする領域

とはいえ、調合製法が万能じゃないのも事実です。発酵由来のエステル香(バナナやリンゴのような複雑な香り)、酵母から生まれる微妙な渋み、長期熟成で生まれる丸み、こういうものは原料添加だけでは再現が難しい。

特にIPAやクラフトビール系の複雑な味、ワインの渋みやタンニン感、日本酒の米の旨味。このあたりは脱アルコール製法のほうが圧倒的に有利です。ドイツ産のノンアルビールが評価高いのも、ベースが本物の醸造ビールだから。ドイツ産ノンアルが美味しい理由を掘り下げた記事で書いたとおり、製法の違いが味の奥行きに直結してます。

だから「調合製法は悪、脱アルコール製法は善」みたいな二元論はナンセンスで、目的に合わせて選べばいい。食事中にゴクゴク飲みたい日と、じっくり味わいたい日では、選ぶべきタイプが違います。

調合製法の代表的な銘柄と味の特徴

日本で売られてるノンアルビールの過半数は調合製法だと言われてます。具体的にどんな銘柄があるかを並べると、市場の地図が見えてきます。

アサヒ・ドライゼロ。日本のノンアルビール売上No.1の定番。麦芽エキス、ホップ、酸味料、香料、甘味料などで「ドライ」な後味を再現してます。食事に合わせやすく、雑味が少ない。サントリー・オールフリー。糖質ゼロ・カロリーゼロ・プリン体ゼロの三冠で長年支持されてる。香りの立ち方が綺麗で、軽快な飲み口。

キリン・パーフェクトフリー。機能性表示食品の代表格で、難消化性デキストリンを配合して脂肪と糖の吸収を抑える設計。サッポロ・プレミアムアルコールフリー。ホップ感が強めで、ビールらしい苦味を前面に出してます。

このあたりは全部、調合製法をベースにそれぞれの設計思想で味を組み立ててます。同じ「混ぜるだけ」でも、出来上がるものは全く別物。これが調合製法の懐の深さです。

ノンアルワイン・カクテル系での調合製法

ビール以外でも調合製法は広く使われてます。ノンアルチューハイの大半は、果汁と香料と炭酸と糖類で組み立てる調合製法。ノンアルカクテルやモクテルベースのシロップも、原料配合の世界です。

ワインだけは話が別で、ぶどうの複雑な風味を香料だけで作るのは難しいので、脱アルコール製法が主流。ただし最近は、ぶどう果汁ベースに香料やタンニン抽出物を加える調合タイプも増えてます。低価格帯のノンアルワインはこの方向。

ノンアル日本酒に至っては、米麹由来の甘酒ベースに酸味料を加える調合系が中心です。製法を知ってラベルを見ると、自分の好みの作り方を選べるようになります。

調合製法のメリットとデメリットを整理する

メリットは大きく4つ。コストが低いので価格を抑えられる、製造期間が短いので新商品の投入が速い、糖質ゼロ・カロリーゼロのような機能性設計が自由、安定した品質を保ちやすい。とくに4つ目は重要で、発酵だとロットごとに味のブレが出るんですが、調合は設計値通りに毎回同じ味を作れる。

デメリットは2つ。発酵由来の複雑な香味は出しにくい、香料に頼る設計だと安っぽい印象になりやすい。後者は設計者の腕でかなり克服できるけど、コストを切り詰めた製品だとどうしても出てきます。

あと健康面で言うと、調合製法はカロリーや糖質を細かくコントロールできるので、機能性表示食品やトクホとして設計しやすい。体に悪いのは見えない糖質と添加物だったという記事でも触れたけど、表示を見て自分の体質に合うものを選ぶのが正解です。

添加物への不安をどう考えるか

調合製法の話をすると、必ず「添加物だらけじゃないの?」という質問を受けます。確かに原材料表示を見ると、香料、酸味料、甘味料、苦味料といった文字が並ぶ。これだけ見るとケミカルな印象がある。

ただ、香料の多くはホップや麦芽から抽出された天然成分。酸味料の主役はクエン酸や乳酸で、レモンやヨーグルトにも含まれてる。甘味料も品目によって、ステビアやエリスリトールのような天然由来のものから、アスパルテームのような合成のものまで様々です。

添加物を全部避けたいなら、龍馬1865のような無添加ノンアルや、脱アルコール製法のヴェリタスブロイを選ぶ手もある。逆に機能性を重視するなら調合製法の機能性表示食品が便利。自分の優先順位次第です。

今後の調合製法の進化|どこへ向かうのか

個人的に面白いと思ってるのは、調合製法と発酵製法のハイブリッド化です。最近のクラフトノンアルでは、軽く発酵させてから調合で味を整える、というアプローチが出てきてます。発酵の複雑さと調合の自由度を両取りする発想。

もうひとつはAI活用。フレーバー設計を機械学習でシミュレーションして、官能評価の試行回数を減らす取り組みが各社で始まってます。これが進むと、調合製法の味の天井がもう一段上がる可能性がある。

あとはサステナビリティの観点。調合製法は水とエネルギーの消費が発酵に比べて少ないので、環境負荷の面では優位です。SDGsを意識する大手メーカーが、調合製法をベースに新ラインを立ち上げる動きも出てきてます。「混ぜるだけ」と侮るなかれ、技術はちゃんと進化してます。

消費者として何を見て選ぶか

ラベル裏の原材料表示を見るクセをつけると、製法がだいたい推測できます。「麦芽、ホップ、香料、酸味料、甘味料、炭酸ガス」と並んでいたら調合製法。「麦芽、ホップ」だけでシンプルなら脱アルコール製法か発酵脱アル製法の可能性が高い。

あとは価格帯。150円を切るような製品は調合製法が中心、200円を超えるプレミアム帯は脱アル製法が増える。輸入品は脱アル製法のほうが多い傾向。こういう目安を持っておくと、自分の好みの製品を見つけやすくなります。

結局のところ、製法は選ぶときのヒントのひとつでしかなくて、最後は自分の舌で決めるしかない。私自身、調合製法のドライゼロは食事のお供に常備してるし、休日にじっくり飲むときはヴェリタスブロイみたいな脱アルを選んでます。両方使い分けるのが、いちばん豊かだと思ってます。

よくある質問

Q1. 調合製法のノンアルビールは体に悪いですか?

結論から言うと、ふつうに飲む量なら問題ありません。使われてる香料や酸味料は食品衛生法で安全性が確認されたものだけで、コーラやジュースに使われてるのと同じ系統の成分です。気になるなら無添加表記の製品や、糖質ゼロ・人工甘味料無添加の製品を選べばさらに安心。

Q2. 調合製法と脱アルコール製法、どっちが美味しいですか?

これは目的によります。食事中にゴクゴク飲んでリフレッシュしたい、コスパよく毎日飲みたい、糖質やカロリーを管理したいなら調合製法が向いてます。じっくり味わって本物のビールの代わりにしたい、複雑な香味や余韻を楽しみたいなら脱アルコール製法。私は両方使い分けてます。

Q3. ラベルを見て調合製法かどうか見分けられますか?

完全には判別できませんが、原材料の並びである程度推測できます。香料、酸味料、甘味料、苦味料が並んでいたら調合製法の可能性が高い。逆に「麦芽、ホップ」だけのシンプル表示なら脱アルコール製法か、発酵後に脱アルする方式が多いです。あとは価格帯も参考になります。

Q4. 調合製法でクラフトビールのような複雑な味は出せますか?

正直、限界はあります。IPAやペールエールのような、酵母由来のエステル香やドライホッピングの複雑な香りは、調合だけでは再現が難しい。ただ最近のクラフトノンアルは、軽く発酵させてから調合で整えるハイブリッド方式が増えていて、ここ数年で完成度がかなり上がってます。

Q5. 調合製法のノンアルは妊娠中でも飲めますか?

アルコール度数が0.00%表記なら基本的に問題ありませんが、念のため主治医に相談してください。製法による安全性の差はほぼなく、むしろ気にすべきは表記上のアルコール度数(0.00%か、0.5%未満かなど)と、カフェイン入りでないかどうか。妊娠中はノンアル日本酒や甘酒タイプの選択肢もあるので、用途に応じて選ぶといいです。

Q6. 調合製法のノンアルは運転前に飲んでも大丈夫ですか?

アルコール度数0.00%なら法的にもセーフですが、0.5%未満の微アルコール表記には注意が必要です。微アルは調合製法でも脱アル製法でも作られてます。表示を必ず確認して、運転前は0.00%表記の製品を選んでください。

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