先週、知り合いのバーテンダーから「World Beer Awardsの過去受賞リスト、どこ見れば全部わかる?」と聞かれて、答えに詰まった。公式サイトは年ごとにページが分かれてて、Non-Alcoholic部門だけ拾うのが地味に面倒。自分の手元にあるメモを整理してみたら、結構な情報量になったので記事にまとめることにした。
World Beer Awards(WBA)は、英国のメディアグループParagraph Publishingが2007年から運営している国際的なビールコンペティション。Non-Alcoholic部門が独立カテゴリとして本格的に動き出したのは2018年頃で、そこから毎年スタイル別の金賞・カントリーウィナー・ワールドベストが選出されている。受賞銘柄は世界のNoLo市場のトレンドをそのまま映してる。
この記事では、Non-Alcoholic部門の歴代受賞作をスタイル別・年度別にリスト化して、日本で買えるかどうか、どんな味の傾向かまで含めて整理する。受賞リストを眺めるだけで「今ノンアルで世界基準ってこのレベルなんだ」というのが体感できるはず。
World Beer Awardsとは何か、Non-Alcoholic部門の位置づけ
WBAは年1回、英国ロンドンを拠点に開催される国際ビール審査会。エントリー数は毎年2000銘柄を超え、Lager、Ale、Stout、Wheat、Flavoured、Speciality、そしてNon-Alcoholicという大カテゴリに分かれる。審査はブラインドテイスティングで、専門家パネルが香り・外観・味・余韻を採点する。
Non-Alcoholic部門は当初、Speciality枠の中の一区画でしかなかった。2018年あたりから独立性が強まり、現在はLager・Pale・Wheat・Dark・Flavouredなど、アルコールビールと同じスタイル粒度でサブカテゴリが組まれている。これは「ノンアルが酒の代替ではなく、独立したカテゴリとして評価されるようになった」ことの象徴だと思ってる。
審査の階層構造
WBAの賞には階層がある。まずスタイル別の中で銅・銀・金が選ばれ、その中からカントリーウィナー(国別最優秀)、さらにスタイルウィナー(世界最優秀)が決まる。Non-Alcoholic部門の「ワールドベスト」を取った銘柄は、世界中のノンアルビールの中で頂点に立った1本ということになる。
WBAと並ぶ世界三大NAビールアワードについては、以前ノンアルコール飲料の品評会・コンテストをまとめた記事で全体像を解説した。WBAだけが特別というよりは、Brussels Beer ChallengeやInternational Beer Cupと合わせて見ることで、業界全体の評価軸がわかる構造になってる。
なぜ受賞リストを追う意味があるのか
正直に言うと、「アワード受賞」のシールが貼ってあるだけで売り上げが伸びる時代でもない。でも、過去5年分の受賞作を並べてみると、製造技術の進化が一目でわかる。2018年に金賞だった銘柄を今飲むと「あの頃はこれが最高峰だったのか」と感じるレベルで、業界全体のレベルが底上げされてる。
つまり、過去受賞作リストは「ノンアル製造技術の年表」として読める。これから1本ずつ深掘りしていく。
2018〜2019年の受賞作|ドイツ勢の独壇場
Non-Alcoholic部門が本格化した初期、受賞リストの上位はほぼドイツ銘柄で埋まってた。ヴァイエンステファン、エルディンガー、ビットブルガー、クラウスターラーといった老舗が、長年磨いてきた発酵抑制法の実力をそのまま見せつけた格好になる。
2018年のWorld’s Best Non-Alcoholic Lagerに選ばれたのはBitburger Drive(ドイツ)。麦のコクとホップの苦味のバランスがアルコール版とほぼ変わらないと審査員コメントに残ってる。同年のWheat部門ではErdinger Alkoholfreiが金賞。バナナ香とクローブのスパイス感が見事に再現されていた。
2019年はWeihenstephaner Hefeweissbier Alkoholfreiがワールドベスト・ウィートを受賞。世界最古の醸造所が作るノンアルが世界一に輝いたという象徴的な年になった。ドイツのノンアルビール文化が世界一なのには明確な理由があって、その背景はドイツのノンアルコールビール文化の記事で掘り下げた。
2018〜2019年の主要受賞作リスト
| 年 | スタイル | 銘柄 | 国 | 賞 |
|---|---|---|---|---|
| 2018 | Lager | Bitburger Drive | ドイツ | World’s Best |
| 2018 | Wheat | Erdinger Alkoholfrei | ドイツ | Gold |
| 2018 | Pale | Krombacher Alkoholfrei | ドイツ | Gold |
| 2019 | Wheat | Weihenstephaner Hefeweissbier Alkoholfrei | ドイツ | World’s Best |
| 2019 | Lager | Clausthaler Original | ドイツ | Gold |
| 2019 | Dark | Maisel’s Weisse Alkoholfrei | ドイツ | Gold |
この頃のリストを見ると、英米のクラフト系がまだ存在感を持ってなかったのがよくわかる。受賞銘柄の8割がドイツとオランダで、伝統的な脱アルコール製法・発酵抑制法の地盤の強さがそのまま反映されてた。
2020年|パンデミックと同時にクラフトNAが台頭
2020年のWBAは、コロナ禍で在宅需要が爆発した時期と重なる。ここから受賞リストの顔ぶれが急に変わり始めた。アメリカのAthletic Brewing Co.、英国のBig Drop、Brewdog AFといったクラフト系が金賞リストに名を連ねるようになる。
象徴的だったのが、Athletic BrewingのRun Wild IPAが2020年にPale部門でゴールド入り。IPAスタイルでノンアルが取れるという事実が、業界にインパクトを与えた。ホップアロマを残したまま脱アルコールする逆浸透膜技術の進化を示した出来事として、今でも語られてる。
同じ年、英国のBig Drop Pale AleもPale部門で金賞。こちらはアルコール抜きで仕込む全く別のアプローチで、低糖度の麦汁を使った独自製法。受賞理由は「ノンアルとは思えないボディ感」だった。アメリカのクラフトNAビール市場が爆発的に成長した背景は、米国クラフトNA市場の記事に詳しくまとめてある。
2020年の主要受賞作リスト
| スタイル | 銘柄 | 国 | 賞 |
|---|---|---|---|
| Lager | Heineken 0.0 | オランダ | Gold |
| Pale | Athletic Run Wild IPA | 米国 | Gold |
| Pale | Big Drop Pale Ale | 英国 | Gold |
| Wheat | Erdinger Alkoholfrei | ドイツ | World’s Best |
| Dark | Nirvana Sutra | 英国 | Gold |
| Flavoured | Brewdog Nanny State | 英国 | Gold |
この年からリストの多様性が一気に広がった。ヘイジーIPA、ミルクスタウト、フルーツビアまでノンアルで再現される時代に入ったのが、リストからそのまま読み取れる。
2021〜2022年|世界中のブルワリーが本気を出した
2021年と2022年は、Non-Alcoholic部門のエントリー数が前年比で倍増した時期。それまでアルコール版を主力にしていた老舗ブルワリーが、ノンアルラインを次々と立ち上げて参戦してきた。リストにはベルギー、オーストラリア、南アフリカ、日本の銘柄まで顔を出すようになる。
2021年に注目を集めたのがHeaps NormalのQuiet XPA(オーストラリア)。エクストラ・ペールエール(XPA)スタイルでPale部門の金賞を受賞した。オーストラリアのクラフトNAシーンが世界に認知された瞬間だった。同時期、ドイツのPaulaner Weissbier Alkoholfreiが安定してWheat部門の上位常連入り。
2022年は、ベルギーのHoegaarden 0.0がWheat部門のカントリーウィナーに。ベルギー発祥のノンアルホワイトビールが世界基準で評価された一例で、その歴史と代表銘柄はベルギーのノンアルホワイトビール記事にまとめてある。
2021〜2022年の主要受賞作リスト
| 年 | スタイル | 銘柄 | 国 | 賞 |
|---|---|---|---|---|
| 2021 | Pale | Heaps Normal Quiet XPA | 豪 | Gold |
| 2021 | Lager | Lucky Saint Unfiltered Lager | 英国 | Gold |
| 2021 | Wheat | Paulaner Weissbier Alkoholfrei | ドイツ | Gold |
| 2022 | Wheat | Hoegaarden 0.0 | ベルギー | Country Winner |
| 2022 | Pale | Athletic Free Wave Hazy IPA | 米国 | Gold |
| 2022 | Stout | Guinness 0.0 | アイルランド | Gold |
Guinness 0.0が2022年にスタウト部門で金賞を取ったのは大きい。本家ギネスの黒ビールの代名詞をノンアルで再現するというのは、長年「無理」と言われていた挑戦だった。窒素ガスを使った独自のクリーミー泡まで再現していて、私もブラインドで飲んだら本物と区別つかなかった。
2023〜2024年|ヘイジーIPAとサワー系が席巻
2023年以降、受賞リストにヘイジーIPA、サワーエール、フルーツビアといった「攻めたスタイル」が大量に登場するようになった。これは脱アルコール製法の精度が上がって、繊細なホップアロマや酸味を保持できるようになった証拠。
2023年のWorld’s Best Non-Alcoholic Pale AleにはAthletic Free Wave Hazy IPAが選出。前年の金賞からさらに格上げされた格好で、ヘイジースタイルがノンアル世界一の座を取った歴史的な瞬間だった。同年、ドイツのKölsch StyleでGaffel Kölsch Alkoholfreiが金賞を獲得。ケルシュという地理的表示の厳格なスタイルがノンアルで再現されたのも初めてのこと。
2024年はLyre’sやSeedlipのようなノンアルスピリッツ大手の影響もあって、ビア・カクテル系のFlavoured部門が活況になった。日本のキリンのグリーンズフリーも、この時期にカントリーウィナーとしてリスト入りしている。
2023〜2024年の主要受賞作リスト
| 年 | スタイル | 銘柄 | 国 | 賞 |
|---|---|---|---|---|
| 2023 | Pale | Athletic Free Wave Hazy IPA | 米国 | World’s Best |
| 2023 | Kölsch | Gaffel Kölsch Alkoholfrei | ドイツ | Gold |
| 2023 | Lager | Estrella Galicia 0.0 | スペイン | Gold |
| 2024 | Wheat | Weihenstephaner Hefeweissbier Alkoholfrei | ドイツ | World’s Best |
| 2024 | Stout | Big Drop Galactic Milk Stout | 英国 | Gold |
| 2024 | Sour | Mash Gang Big Drop Berliner Weisse | 英国 | Gold |
2024年に出てきたMash Gangのベルリナーヴァイセは衝撃だった。乳酸発酵の酸味とフルーツ感を、アルコール度数0.5%で実現してる。サワー系ノンアルというニッチが、世界の表彰台に立った象徴的な1本になった。
日本銘柄の受賞履歴|キリンとアサヒの実績
日本のノンアルビールはWBAでどのくらい評価されてるかというと、正直まだ控えめ。ただし、ここ数年で着実にカントリーウィナーや銀・銅のリスト入りが増えている。
キリンのグリーンズフリーは2023年と2024年にカントリーウィナー(日本)を獲得。無添加製法という独自路線が国際審査員にも評価されている。アサヒのドライゼロもLager部門のシルバーに何度か入っていて、安定したクオリティが認められている。サントリーのオールフリーも2022年にカントリーウィナー入りしてる。
日本勢が世界トップを取れていない理由は、スタイル設計が「日本人の好み」に最適化されているから。海外審査員はもっと骨太な麦感や明確なホップキャラを求める傾向があって、淡麗でクリーンな日本のノンアルは「悪くないが印象に残らない」と評されることが多い。これは欠点ではなく、市場戦略の違いの結果だと思う。
日本銘柄の主要受賞履歴
- キリン グリーンズフリー:2023年・2024年 Country Winner(日本)
- アサヒ ドライゼロ:2021年・2022年 Silver(Lager)
- サントリー オールフリー:2022年 Country Winner(日本)
- 龍馬1865:2020年 Bronze(Lager)
- キリン ゼロイチ:2019年 Silver(Lager)
スタイル別に見る受賞作の傾向
2018年から2024年までの受賞リストを横断的に眺めると、スタイルごとの強豪国が見えてくる。これを知っておくと、自分が好きなスタイルで「世界基準の銘柄」を選びやすくなる。
Lager部門
ドイツとオランダの寡占状態が続いている。Bitburger Drive、Clausthaler、Krombacher、Heineken 0.0が常連。最近はスペインのEstrella Galicia 0.0や英国のLucky Saintが食い込んできていて、地中海・英国スタイルのラガーも評価が上がってきた。
Pale Ale / IPA部門
ここは完全に米国クラフトの独壇場。Athletic Brewingが2020年以降ほぼ毎年金賞を取ってる。ヘイジーIPA、ウェストコーストIPA、ペールエールと全方位で強い。英国のBig Dropとオーストラリアのヘイプス・ノーマルが対抗馬。
Wheat / Witbier部門
ドイツとベルギーが二強。Weihenstephanerが世界最古醸造所の名にふさわしく安定の世界一。Erdinger、Paulaner、Maiselが続く。ベルギー勢はHoegaarden 0.0が代表格。
Stout / Dark部門
このカテゴリはGuinness 0.0と英国Big Drop Galactic Milk Stoutの二強。スタウトをノンアルで仕上げる技術は本当に難しくて、参入できているブルワリーがまだ少ない。それだけに、受賞銘柄はどれもレベルが頭ひとつ抜けてる。
受賞作を実際に飲むときのチェックポイント
過去受賞作リストを眺めて「全部試してみたい」となるのはわかる。でも、闇雲に買い集める前にいくつか押さえておくと無駄が減る。
輸入経路と鮮度の問題
海外の受賞銘柄を日本で入手する場合、輸入ルートと保管状態で味が大きく変わる。特にホップアロマが命のIPA系は、製造から3ヶ月以内が理想。並行輸入で1年経ったものを飲んでも、本来の評価ポイントは味わえない。カルディや専門ECで、入荷日が明示されている店を選ぶのが安全。輸入銘柄の宝庫であるカルディの活用法はカルディのノンアル飲料記事にまとめた。
アルコール度数の確認
WBAのNon-Alcoholic部門は、エントリー条件がアルコール0.5%以下。日本の「ノンアル=0.00%」とは基準が違う。受賞銘柄の多くは0.3〜0.5%の微アルコールに該当するので、運転前や妊娠中の人は必ずラベルを確認すること。0.00%と0.5%の違いと境界線は別記事で詳しく解説してる。
グラス選びで体験が変わる
受賞作レベルのノンアルビールは、グラス選びで体験が大きく変わる。Wheat系はヘーフェヴァイツェングラス、IPAはチューリップ型、ラガーはピルスナーグラス。普段から使い分けてないなら、まずチューリップ型をひとつ持つと汎用性が高くておすすめ。
よくある質問
World Beer Awardsの受賞リストはどこで見られますか?
公式サイト(worldbeerawards.com)に年度ごとのリザルトページがあります。ただし年ごとにページ構成が変わるので、過去年は検索しづらいです。Non-Alcoholic部門だけを通年で追いたい場合は、専門メディアのアーカイブや、本記事のような縦断的なまとめ記事を参照するのが効率的です。
World’s BestとGoldの違いは何ですか?
Goldは各スタイル・各国の中での金賞。World’s Bestはその年のスタイル別世界一です。例えば「2024年のWheat World’s Best」はその年世界で最高のノンアル小麦ビールという意味になります。Goldを取った銘柄の中から、さらに上位選抜されたものがWorld’s Bestと考えてください。
日本のスーパーで買える受賞銘柄はありますか?
あります。Heineken 0.0は大手スーパーや成城石井で安定入手可能。Erdinger、Bitburger、Krombacher、Clausthalerはカルディや業務スーパーで取り扱いあり。Athletic BrewingやBig Dropは専門ECで購入できます。日本銘柄のキリン グリーンズフリー、アサヒ ドライゼロ、サントリー オールフリーはコンビニで手軽に入手可能です。
受賞銘柄は本当に美味しいですか?
正直なところ、好みの問題が大きいです。私が試した範囲では、Wheat系の受賞作は本物との差をほぼ感じない仕上がり。Lagerはドイツ系受賞作なら間違いなく満足できるレベル。IPA系のAthleticは「ノンアルでここまでホップ感が出るのか」と感動します。逆に、深いボディ感を求めるとStout系はまだ本物に届いていない印象です。
WBAとBrussels Beer Challengeはどちらが権威がありますか?
権威の優劣はつけにくいですが、特性が違います。WBAは英国発でスタイル別の評価が細かく、消費者向けマーケティング寄り。Brussels Beer Challengeはベルギー発で、より醸造技術寄りの評価軸。International Beer Cupは日本発でアジア銘柄に強い。3つの受賞歴を併せ持つ銘柄を選ぶと、ハズレが少ないです。
過去受賞作は今でも同じ品質ですか?
レシピ変更や製造設備のアップデートがあるので、5年前の受賞作が今も同じ味とは限りません。むしろ多くの場合、製造技術の進化で「以前より美味しくなっている」ケースが多いです。逆に、コスト削減でレシピが薄くなった銘柄もまれにあります。気になる銘柄は最新ロットを試すのが基本です。


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