先日、羽田から福岡までのJAL便で、隣の席の40代くらいの男性がドリンクサービスの時に「ノンアルビールありますか?」と聞いていた。CAさんは一切戸惑うことなく「はい、キリンの零ICHIをご用意しております」と即答していた。私はその流れを横目で見ながら、5年前だったらこの光景は成立してなかったな、と感じてました。
機内でノンアルを頼むのは、もはや珍しくない。というより、頼まない方が少数派になってきてる路線もある。JAL・ANAともに機内メニューにノンアルビールとノンアルワインを常備するようになったのは2020年前後で、この5年で提供銘柄も路線対応もかなり整ってきた。
この記事では、JALとANAが機内で提供している具体的な銘柄、路線やクラスによる違い、そしてなぜ航空会社がこれほどノンアルに力を入れるようになったのかを整理する。実際に機内で飲むときのちょっとしたコツも最後に書きました。
機内でノンアルが定番化した5年間の流れ
10年前、機内のドリンクメニューにノンアルビールが載っている便はほとんどなかった。あってもリクエストベースで、CAさんが冷蔵庫の奥から探し出してくるような扱いだったと聞いてます。それが2019年から2021年にかけて、JAL・ANAともに正式メニュー化した。
背景は3つある。1つ目は健康志向の広がりで、40代以上のビジネス客が長距離便での飲酒を控えるようになったこと。時差ボケや脱水を悪化させたくない、というシンプルな理由です。2つ目はインバウンド需要の増加で、宗教上・文化上お酒を飲まない乗客への対応が必要になったこと。3つ目はソバーキュリアスという「あえて飲まない」ライフスタイルが、特に若い世代で定着したこと。
実際、ANAの機内誌に載っていた数字だと、国際線プレミアムクラスでのノンアル注文比率はコロナ前と比べて2倍以上になっているそうです。ホテル業界でも同じ現象が起きていて、以前まとめたホテル朝食ビュッフェのノンアル定番化と機内サービスの動きは、完全に連動しています。
機内という特殊環境がノンアルと相性がいい理由
飛行機の中は気圧が地上より低く、味覚が20〜30%鈍る。塩味と甘味は特に感じにくくなるので、機内食が濃い味付けになっているのはこのため。同時に、アルコールの回りも早くなる。地上より少ない量で酔いやすく、着陸後の疲労も残りやすい。
ノンアルなら、この不快感がない。到着後にそのまま仕事に向かえるし、時差調整もしやすい。ビジネスパーソンの間で機内ノンアルが支持される最大の理由がこれ。
加えて、機内は乾燥している。ビールの炭酸と麦芽の香りは、乾いた喉に対して爽快感を与えやすい。ノンアルビールが機内で「意外と美味しい」と感じる人が多いのは、この環境要因も大きいと感じてます。
JALの機内で提供されるノンアル銘柄
JALの機内ノンアルラインナップは、基本的にキリン系が中心。国内線・国際線ともに、ノンアルビールはキリン 零ICHIが定番で提供されている。麦芽100%の脱アルコール製法で、ビールに近い味わいが機内でも損なわれにくい銘柄です。
国際線のビジネスクラス以上では、季節や路線によって銘柄が変わる。過去にはハイネケン0.0やヴェリタスブロイが提供されたこともある。特にヨーロッパ路線では、現地の乗客に馴染みのある海外銘柄を積むケースが多い。ヴェリタスブロイはドイツ産で、機内の乾燥した環境でも麦の香りがしっかり残る印象で、JALのチョイスとしてかなり良いと思ってます。
ノンアルワインは、国際線ファーストクラスとビジネスクラスで提供されている。銘柄は変動するけど、ドイツやフランス産の脱アルコール製法ワインが多い。エコノミークラスでは基本的にノンアルワインの提供はなく、リクエストベースになる。
JAL国内線での実態
国内線は基本的に有料ドリンクの一部としてノンアルビールが提供される。300円前後で、零ICHIかキリンフリーが選べる便が多い。ファーストクラス(国内線)では無料で提供され、機内食とセットで楽しめる。
短距離便でもノンアルを頼む人は増えていて、CAさんに聞いたところ「以前はほとんど注文がなかったけど、今は1便あたり数人は必ず頼まれる」とのこと。羽田-伊丹のような1時間の短距離でも、しっかり定着している。
ANAの機内で提供されるノンアル銘柄
ANAはアサヒ系との関係が強く、ノンアルビールはアサヒ ドライゼロが定番。ドライゼロは日本国内のノンアルビール市場で長年トップシェアを維持している銘柄で、キレのある後味が機内食との相性もいい。以前書いたドライゼロがNo.1であり続ける理由で詳しく解説してますが、機内での採用実績もこの地位を支える要素の1つだと思ってます。
国際線プレミアムクラス以上では、サントリー オールフリーやハイネケン0.0が追加されることもある。ヨーロッパ路線・北米路線ではラインナップが厚めで、ノンアルワインも複数銘柄から選べる場合が多い。
ANAの特徴は、機能性表示食品のノンアル飲料を積極的に採用していること。「体脂肪を減らす」「糖の吸収を抑える」といった機能性を持つ銘柄が、ビジネスクラス以上で選択肢に入る便もある。健康志向の乗客への配慮が細かい。
ANA国際線プレミアムクラスのノンアル体験
去年、成田-シンガポール便のビジネスクラスに乗った時、ノンアルワインを頼んだら「ドイツ産の白と、南アフリカ産の赤どちらにされますか」と聞かれて驚いた記憶がある。5年前なら「ノンアルワインですか?申し訳ございません…」で終わっていた場面が、今では複数銘柄からの選択になっている。
味わいも本格的で、機内食のメインディッシュ(牛フィレのグリル)と合わせても違和感がなかった。CAさんいわく、シンガポール路線はムスリム乗客も多いので、ノンアルワインの需要が特に高いとのこと。ハラル対応の観点でもノンアルは重要な選択肢になっている。
JAL・ANAのノンアル提供銘柄比較表
| 項目 | JAL | ANA |
|---|---|---|
| 国内線メイン銘柄(ノンアルビール) | キリン 零ICHI | アサヒ ドライゼロ |
| 国内線ファーストクラス | 無料提供 | 無料提供(プレミアムクラス) |
| 国際線エコノミー | 零ICHIまたはキリンフリー(無料) | ドライゼロ(無料) |
| 国際線ビジネス以上 | ハイネケン0.0、ヴェリタスブロイ等追加 | オールフリー、ハイネケン0.0等追加 |
| ノンアルワイン提供 | 国際線ビジネス以上 | 国際線ビジネス以上(複数銘柄) |
| 機能性表示食品ノンアル | 限定的 | プレミアムクラスで採用実績あり |
| ノンアルカクテル対応 | リクエストベース | ファーストクラスで対応 |
両社とも基本ラインナップは似ているけど、JALはキリン系、ANAはアサヒ・サントリー系という色分けがはっきりしている。ノンアルワインの選択肢はANAの方がやや厚い印象がある。とはいえ、これは路線・便によって変動するので、細かいラインナップは搭乗前に公式サイトで確認するのが確実。
クラス別・路線別のノンアル対応の実態
ノンアルの選択肢は、クラスと路線で大きく変わる。エコノミークラスの短距離国内線なら選択肢は1〜2種類、国際線ファーストクラスなら10種類近いラインナップになることもある。
エコノミークラスでのノンアル
国内線エコノミーは有料ドリンクとして300円前後、国際線エコノミーは食事時のサービスに含まれる。銘柄は各社の定番1〜2種類。零ICHIかドライゼロがメインで、たまにキリンフリーやオールフリーが積まれている程度。
ワインやカクテル系のノンアルはほぼない。あってもリクエスト対応で、機内にストックがあれば提供という形。エコノミーで確実にノンアルワインを飲みたいなら、事前予約時に問い合わせるのが安全です。
ビジネスクラス以上でのノンアル
ビジネスクラス以上になると、ノンアルの選択肢は一気に広がる。ノンアルビール3〜4種類、ノンアルワイン2〜3種類、ノンアルスパークリング、そして各種フルーツベースのモクテルまで揃う便もある。
特に長距離路線(ヨーロッパ・北米)のビジネスクラス以上は、ソムリエが選定したノンアルワインリストがあることも。機内でここまで本格的なノンアル体験ができるようになったのは、この5年の変化としてかなり大きい。
中東・アジア路線での特殊事情
ドバイ・イスタンブール・ジャカルタなど、ムスリム乗客が多い路線では、ノンアルのラインナップが特に厚い。ハラル認証のあるノンアル飲料が選択肢に入ることも増えていて、宗教上の理由でお酒を飲まない乗客にとっては非常にありがたい。
アルコール度数0.00%であることが明記されている銘柄が選ばれる傾向で、微アルコール(0.5%未満)は基本的に採用されない。この点は各社かなり慎重に運用しています。
機内で美味しくノンアルを飲むコツ
機内は地上と味覚も環境も違うので、ノンアルの選び方・飲み方にもちょっとしたコツがある。私が実際に何回か試して感じたことを書いておきます。
1. 苦味の強い銘柄を選ぶ
機内では甘味・塩味が感じにくくなる一方、苦味は比較的しっかり感じられる。なので、ホップの効いたキレのあるノンアルビールを選ぶと、地上よりむしろ美味しく感じることがある。ドライゼロや零ICHIは、この点で機内向きだと思ってます。
2. 食事の直前より、食事と一緒に
ドリンクサービスの最初のラウンドで頼むより、機内食と一緒に頼む方が満足度が高い。ノンアルビールは食事の脂を切ってくれるし、口の中をリセットしてくれる。空きっ腹に炭酸だけ流し込むと、機内では意外と胃が張ります。
3. 水分補給と組み合わせる
ノンアルビールは炭酸ガスが強いので、それだけを飲み続けると軽い脱水を招くことがある。ノンアル1杯につき水も1杯、というペースで飲むと快適に着陸できる。長距離便では特に重要。
4. ノンアルスパークリングは離陸後30分待つ
ノンアルスパークリングワインを頼む場合は、離陸直後より少し落ち着いてから頼んだ方がいい。気圧の変化で炭酸が暴れやすく、注いだ瞬間に泡が溢れることがある。CAさんも慣れているので、水平飛行に入ってからサーブしてもらえるように頼むと丁寧に対応してくれる。
今後の機内ノンアル、どう進化するか
ここから先の変化として、いくつか予測できるポイントがある。1つ目は、クラフトノンアルビールの機内採用が増えること。すでに一部の海外エアラインではAthletic Brewingなどのクラフトノンアルを提供しており、JAL・ANAも追随する可能性が高い。
2つ目は、ノンアルカクテル(モクテル)のメニュー化。現状はリクエストベースだけど、ビジネスクラス以上ではメニューに載る流れになりそう。フルーツベースの香り高いモクテルは、機内の乾燥した環境でも楽しめる。以前書いたモクテルの語源と文化を読むと、この流れの背景がよくわかると思います。
3つ目は、機能性表示食品ノンアルの拡大。長距離フライトの疲労軽減・睡眠改善を訴求する銘柄が、ビジネス客向けに導入されていく可能性が高い。GABA配合・ヘスペリジン配合など、機内という特殊環境に合わせた製品開発が進むと思ってます。
4つ目は、日本産クラフトノンアルの国際線採用。オリオンビールの「クラフトザ・ドラフトFREE」など、地域色のあるノンアルが国際線で提供されれば、日本の観光プロモーションにもつながる。すでにJALは「日本発」をブランド軸にしているので、ノンアル領域でも展開する可能性は高い。
よくある質問
Q1. 機内のノンアルビールは無料ですか?
国内線エコノミーは有料(300円前後)が基本。国内線ファーストクラス・国際線全クラスでは無料で提供されるのが一般的です。国際線LCCの場合は有料のことも多いので、事前に確認をおすすめします。
Q2. 事前予約でノンアル銘柄をリクエストできますか?
JAL・ANAともに、国際線ビジネスクラス以上であれば事前リクエストの相談は可能です。ただし、機材や路線の制約でリクエスト通りにならないこともあるので、確定ではなく「可能な限り対応」という扱いになります。予約センターに電話するのが確実。
Q3. 機内のノンアルビールを飲んで、着陸後すぐ運転しても大丈夫?
JAL・ANAで提供されているノンアルビールは基本的にアルコール度数0.00%表記の銘柄なので、法的には問題ありません。ただし、微アルコール銘柄(0.5%未満)が提供されるケースもゼロではないので、心配な方はCAさんに確認するといいです。
Q4. 妊娠中でも機内のノンアルは飲めますか?
アルコール度数0.00%の銘柄であれば、基本的には問題ないとされています。ただし機内は気圧が低く体調も揺らぎやすいので、体調と相談しながら少量ずつ飲むのが安心。心配な場合はCAさんにアルコール度数を確認してから注文するといいです。
Q5. LCC(ピーチ・ジェットスターなど)の機内ノンアル事情は?
LCCも近年ノンアルを機内販売メニューに追加している傾向。ピーチはドライゼロ、ジェットスターは提供銘柄が変動します。ただし全便で常備というわけではないので、飲みたい場合は事前に空港で購入して持ち込むのが確実。ペットボトル・缶ともに国内線なら機内持ち込み可能です(液体制限に注意)。
Q6. ノンアルワインは機内で本当に美味しく飲めますか?
脱アルコール製法で作られた本格的なノンアルワインなら、機内でも十分に楽しめます。特にビジネスクラス以上で提供される銘柄は品質が高いものが多く、機内食とのペアリングも成立します。エコノミーで提供される簡易的なノンアルワインだと期待外れになることもあるので、そこは正直、クラスによる差はあると感じてます。


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