先週、友人の結婚式に呼ばれた。妊娠7ヶ月の同僚と同じテーブルで、彼女が乾杯の瞬間にオレンジジュースじゃなくノンアルのスパークリングを手にしていた。グラスも同じフルート型、色もほんのり黄金色、乾杯のタイミングも周りと完全に揃ってる。彼女はぽつりと「5年前の私の結婚式のとき、ここまで気を遣ってもらえなかった」と言った。
この5年で、結婚式場のドリンクメニューは静かに、でも決定的に変わった。ノンアルは「あったら嬉しい特別対応」から「あって当たり前の標準装備」になった。ホテルウェディング、ゲストハウス、レストランウェディング、どこの見積書を見てもノンアル欄がある。しかも銘柄まで指定できる式場が増えてる。
なぜここまで変わったのか。業界を10年以上見てきて、その背景には複数の要因が絡んでる。今日はそれを解きほぐしていきます。
2015年までの結婚式場のドリンク事情
2015年以前、式場のドリンクメニューは驚くほど単純だった。ビール、ワイン(赤白)、日本酒、焼酎、ソフトドリンクはウーロン茶とオレンジジュースとコーラ。以上。妊婦さんや下戸のゲストは「ソフトドリンク」の欄からウーロン茶を選ぶしかなかった。
乾杯の瞬間もそう。シャンパンフルートに注がれるのは基本的にスパークリングワイン一択。飲めない人はスタッフに小声で「オレンジジュースで」と伝えると、ワイングラスではなく普通のタンブラーで運ばれてきた。グラスの形状が違うので、写真を撮ると一目でわかる。「あの人だけ飲めない人」という視覚的な区別が発生していた。
新郎新婦側もそこまで気にする余裕がなかった。招待客リストの管理、席次、料理のアレルギー対応、装花、演出、山ほどある準備の中で、ドリンクの選択肢まで細かく設計するのは現実的じゃなかった。式場側から「妊婦さんいらっしゃいますか?」と聞かれることはあっても、「ソフトドリンクご用意しますね」で終わっていた。
「飲めない人」への配慮が薄かった時代
正直に書くと、当時の結婚式は「お酒が飲める前提」で設計されていた。乾杯酒、テーブルワイン、二次会のシャンパンタワー、全部お酒。飲めないゲストは黙って炭酸ジュースをちびちび飲むしかなかった。
妊娠中の友人が「結婚式に呼ばれたけど気が重い」と漏らしていたのを覚えてる。理由を聞くと、「乾杯のときに自分だけコップの中身が違うのが恥ずかしい」「祝いの席なのに疎外感がある」だった。この感情を持つ人は当時も少なくなかったはずだけど、業界全体では見過ごされていた。
2020年前後で何が変わったのか
転換点は明確に2019年から2021年の間にあった。理由は3つあります。
1つ目は、ノンアル飲料自体の品質が劇的に向上したこと。ドライゼロやオールフリーみたいなノンアルビールが「本物のビールに近い味」を出せるようになり、ノンアルスパークリングも脱アルコール製法の進化で、シャンパンに寄せた本格的な味わいが実現できるようになった。式場側が「これならお客様に出せる」と判断できる品質水準に到達した。
2つ目は、ソバーキュリアスというライフスタイルが日本にも上陸したこと。「あえて飲まない」という選択肢が20〜30代を中心に広がり、結婚式でも「妊婦さんだから飲まない」「体質だから飲めない」だけじゃなく「今日は運転するから」「翌日大事な予定があるから」「そもそもお酒に興味がない」という理由でノンアルを選ぶゲストが増えた。ソバーキュリアスというライフスタイルの広がりは、結婚式業界の顧客層の変化と完全に重なっている。
3つ目は、コロナ禍。2020〜2021年の緊急事態宣言下で、式場は感染対策と同時に「多様な価値観のゲスト」への対応を迫られた。少人数婚が主流になり、1人1人のゲストへの対応が丁寧になった時期。この流れで、ノンアル対応も「面倒くさい特別対応」から「基本サービス」へと格上げされた。
SNS時代の写真映えという要因
もう1つ大きいのが、SNS。インスタグラムで結婚式の写真が拡散される時代、新郎新婦にとって「ゲストが写り込む写真」の見栄えは重要になった。乾杯のシーンで1人だけウーロン茶のタンブラーを持ってる、というのは新郎新婦にとっても避けたい構図。
ノンアルスパークリングをフルートグラスに注げば、写真上はシャンパンと区別がつかない。この「見た目の統一感」が、実は式場がノンアル導入を急いだ隠れた理由の1つ。花嫁の口コミサイトでも「ノンアル対応の有無」がチェック項目になり、式場側も無視できなくなった。
現在の式場ドリンクメニューの標準構成
2025年時点で、中〜大手の式場のドリンクメニューはこう構成されているのが標準。実際にいくつかの式場のフリードリンクプランを比較してみた。
| カテゴリ | 2015年頃 | 2025年現在 |
|---|---|---|
| 乾杯酒 | スパークリングワイン | スパークリング/ノンアルスパークリングから選択 |
| ビール | 生ビール | 生ビール+ノンアルビール(銘柄指定可) |
| ワイン | 赤・白 | 赤・白・ノンアル赤・ノンアル白 |
| カクテル | 数種類 | アルコール/ノンアルカクテル両対応 |
| ソフトドリンク | ウーロン茶・オレンジ・コーラ | 10種類以上(お茶系・炭酸・機能性) |
ホテルウェディング系だとさらに手厚くて、乾杯用のノンアルシャンパンにDuc de Montagne(デュック・ドゥ・モンターニュ)やCarl Jung(カールユング)といった海外の高級ノンアルスパークリングを指定できるところも増えた。「ゲストに本物と遜色ないものを」という発想が業界に浸透してきた証拠だと思ってます。
乾杯ドリンクの選び方が変わった
乾杯の1杯目、これが式場ドリンクの中で最も気を遣うポイント。全ゲストが同時に手にする、写真に必ず写る、司会者の掛け声で一斉に飲む、この特殊なシーンで「飲めない人だけ違うグラス」を避けたいというニーズが強くなった。
結果として、乾杯用のノンアルスパークリングは「見た目が本物に近いこと」「フルートグラスに注いだときにちゃんと泡が立つこと」「甘すぎず食前酒として成立すること」の3条件が求められるようになった。結婚式の乾杯ドリンク選びのポイントを式場スタッフが真剣に検討する時代になったということ。
式場がノンアルを導入する裏側の経営判断
ここからは業界人しか話さない話。式場がノンアルを標準搭載するようになった背景には、実は経営的な計算もある。
フリードリンクプランの原価構造を考えると、ノンアルは実はお酒より原価率が低い。生ビール1杯の原価が150〜200円だとして、ノンアルビールは仕入れ値が1本100〜130円程度。ワインも同様に、ノンアルワインは正規輸入でも1本1500円前後で仕入れられる。式場としては、ノンアルを提供しても粗利は保てる、むしろ良くなる場合もある。
さらに、ノンアル対応を謳うことで「妊婦の友人がいる新婦」「下戸のゲストが多い新郎」という顧客層を取り込める。ゼクシィなどの式場検索サイトでも「ノンアル対応◎」は選ばれる要因の1つになってる。マーケティング的にも合理的な判断。
仕入れルートの整備が進んだ
ノンアル対応が広がった裏には、業務用の仕入れルートが整ったという事情もある。以前はノンアル飲料を業務用で仕入れようとすると、種類が少なくて選択肢がなかった。今はサントリー、アサヒ、キリンといった国内大手が業務用ノンアル製品ラインを拡充し、輸入卸もノンアルスパークリング専門の卸業者が複数存在する。
式場側は在庫リスクを気にせずメニューに載せられるようになったし、シーズンごとの新商品も入手しやすい。5年前とは仕入れ環境が根本的に違う。
ゲスト側の意識変化も見逃せない
もう1つ大きな要因が、ゲスト側の意識。以前は「結婚式でノンアル?そんなの頼めないよ」という空気があった。飲めない人ほど遠慮して、無理してビールを1口だけ飲んでみたり、乾杯だけシャンパンで我慢したり。
今は違う。「私、車で来たのでノンアルで」「妊娠中なんでノンアルシャンパンありますか?」と自然に頼める空気ができた。式場スタッフもそれを想定していて、「ノンアルビールはドライゼロとオールフリーどちらがよろしいですか?」と銘柄まで聞いてくれる。この対応の丁寧さが、ゲストの満足度に直結する。
40代の私自身、ここ数年で参加した式では毎回ノンアルを頼んでる。翌日の予定を考えて選択してるだけなんだけど、以前のような気まずさは全くない。「ノンアルシャンパン、こちらでよろしいですか」と確認してくれるスタッフの表情に、慣れた対応の余裕を感じる。
新郎新婦の事前打ち合わせで確認される項目
今の式場では、新郎新婦との事前打ち合わせで必ずノンアル関連の確認が入る。「妊婦のゲストは何名いらっしゃいますか」「アルコールを召し上がらないゲストは何名いらっしゃいますか」「乾杯用ノンアルスパークリングをご用意しますか」といった質問が標準化された。
これは10年前には考えられなかった対応。式場側が「聞かないと失礼」というレベルまで意識が上がってきた証拠だと感じてます。
具体的にどんな銘柄が使われているのか
実際に式場で採用されているノンアル銘柄を、これまでの取材と自分の参列経験からまとめてみた。ホテル系とゲストハウス系で若干傾向が違います。
- 乾杯用ノンアルスパークリング:Duc de Montagne、Carl Jung、シャルル・ジャダン・ノンアルコール
- ノンアルビール:ドライゼロ、オールフリー、ヴェリタスブロイ(高級路線)
- ノンアルワイン:ヴィンテンス(Vintense)、ドクター・ロウ、シャルル・ジャダン
- ノンアルカクテル:モクテル対応、モヒート風・ミモザ風
- その他:レモンサワー風のノンアル、ノンアル梅酒(ウメッシュゼロ)
ホテル系は輸入ものの本格派、ゲストハウス系は国産大手ブランドで揃えることが多い印象。予算やコンセプトによって使い分けられてます。祝杯にふさわしいノンアルスパークリングの選び方を知っておくと、自分の結婚式のときにも式場と交渉しやすい。
持ち込み料の交渉が可能な式場も
お気に入りのノンアル銘柄がある場合、持ち込みできる式場も増えた。以前は「持ち込み料1本3000円」みたいな高額な設定だったのが、ノンアルは持ち込み料無料や割引を設定する式場も出てきてる。理由はシンプルで、式場側もノンアル銘柄の選択肢を全部揃えるのが難しいから。
「新婦の妊娠中の親友のために特別なノンアルシャンパンを用意したい」というリクエストは、今の式場だと結構前向きに検討してくれる。10年前なら「規定外です」で一蹴されていた話。
これから先の結婚式場のノンアル事情
ここから5年、式場のノンアル事情はどう変わるか。業界を見てる立場で予想すると、3つの方向に進むと思ってます。
1つ目は「ペアリングメニューのノンアル対応」。コース料理の各皿にペアリングされるワインの、ノンアル版を揃える動き。既に一部の高級ホテルウェディングでは始まってる。前菜にはノンアルの白、メインには脱アルコール製法の赤、デザートにはノンアルスパークリング、という組み合わせが標準化していく。
2つ目は「トクホ・機能性表示食品ノンアルの導入」。式後の二次会や翌日の疲労を考慮して、健康効果を謳ったノンアル飲料を選ぶ動き。トクホのノンアル一覧から式場が銘柄を選定する時代が来ると予想してる。
3つ目は「モクテルバーの併設」。二次会会場やアフターパーティで、バーテンダーがノンアルカクテルを目の前で作ってくれる演出。これはインスタ映え要素も強くて、若い世代に響く。
式場スタッフの教育も変わってきた
プランナーやサービススタッフの研修内容にも、ノンアル飲料の知識が組み込まれるようになった。銘柄の特徴、味わい、どんなシーンでおすすめするか、まで教えられる。10年前のサービススタッフは「ノンアルビールってドライゼロですよね」くらいの認識で止まっていたけど、今は「お客様のお好みに合わせて甘口/辛口/フルーティ/ドライ、選べます」と答えられる。
これは業界全体のプロフェッショナリズムの向上を意味してる。ノンアルが「サブ」ではなく「メイン級のドリンクカテゴリ」として位置付けられた。
よくある質問
Q1. 結婚式でノンアルを頼むのは失礼になりませんか?
全く失礼になりません。今の式場はゲストのノンアル選択を完全に想定していて、スタッフも慣れた対応をしてくれます。むしろ無理してお酒を飲んで体調を崩す方が新郎新婦に心配をかけるので、遠慮せずノンアルを選んで大丈夫です。
Q2. 乾杯のときにノンアルシャンパンを頼むと目立ちますか?
目立ちません。今の式場は本物のシャンパンと同じフルートグラスに、色や泡質も本物に近いノンアルスパークリングを注いでくれます。写真に写っても区別がつかないので、乾杯の統一感を損なうこともありません。
Q3. 自分の結婚式でノンアルを充実させたい場合、式場にどう伝えればいいですか?
プランナーとの打ち合わせで「ノンアル対応を充実させたい」と明確に伝えれば、既存メニューの中から複数銘柄を選ばせてくれます。特定の銘柄を希望する場合は持ち込みの可否と料金を確認しましょう。妊婦や下戸のゲストが複数いる場合は、事前にリストを渡しておくとスムーズです。
Q4. ノンアルスパークリングの持ち込み料はどれくらいかかりますか?
式場によりますが、ノンアルは通常のお酒より持ち込み料が安い傾向にあります。1本500〜1500円が相場。無料の式場も出てきています。契約前に必ず確認してください。
Q5. コース料理のペアリングでノンアル対応してくれる式場はありますか?
高級ホテルウェディング系では対応してくれるところが増えてきました。前菜・魚料理・肉料理・デザートそれぞれに合わせたノンアル飲料をペアリングする「ノンアルペアリングコース」を提供する式場もあります。ソムリエがいる式場だと質の高いペアリングが期待できます。
Q6. ノンアル選びで注意すべき点はありますか?
妊婦のゲストがいる場合は「アルコール度数0.00%」表記のものを選んでください。「0.5%未満」表記のものは微量にアルコールが含まれる場合があるので、妊娠中の方には避けたほうが安全です。式場スタッフに確認するのが確実です。


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