JASマーク・有機JASとノンアル|認証取得の流れを現場目線で解説

有機JASマークと有機原料のノンアル飲料が並ぶ作業卓 ノンアル
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取材で訪れた小さなノンアル工房で、棚に並んだボトルのうち1本だけ、ラベルの右下に小さな緑のマークが付いてた。有機JASマーク。社長さんが「これ取るのに、結局2年弱かかりました」と苦笑いしながら教えてくれた話が、今でも忘れられない。

有機JASは、ただ「オーガニック原料を使った」だけでは付けられない。畑の土から、製造ライン、書類の保管方法まで、全部審査される。しかも認証機関に支払う費用は年間で数十万。それでもなぜ取るのか。そして実際にどんな流れで取るのか。今日はそのリアルなところを書いていきます。

ノンアル業界でも有機JASを取得する商品は少しずつ増えてる。でも情報がほとんど出回ってない。私が取材した範囲と、農林水産省の公式資料を突き合わせて、できるだけ実務目線で整理してみました。

JASマークと有機JASの根本的な違い

そもそもJASマークって、種類がいくつもある。緑の有機JASだけじゃない。一般JAS、特定JAS、生産情報公表JAS、特色JAS。これが結構ごっちゃになってるので、まずここを整理します。

一般JASは品質基準を満たした商品に付くマーク。たとえば「果実飲料JAS」みたいな規格があって、それをクリアしたら付けられる。これは「品質保証」の意味合いが強い。一方で有機JASは「製法・原料の証明」。有機栽培された原料を、有機の基準で加工して、初めて付けられる。意味するところがまったく違うんです。

ノンアル飲料で「JASマーク付けたい」と言うとき、多くの場合は有機JASを指してる。なぜかというと、一般JAS規格にノンアル飲料そのものを直接カバーするものが少ないから。果実飲料や炭酸飲料の規格はあるけど、ノンアルビールやモクテルのJAS規格は基本的にない。だから自然と「有機JASを取るかどうか」の議論になる。

緑のマークが意味するもの

有機JASマークの緑色には、太陽と雲と植物がデザインされてる。これ、JAS法に基づいて農水省が定めた公式マークで、無断使用は法律違反。罰則は最大で1億円の罰金です。「うちはオーガニック原料使ってるから有機って書いていい?」と聞かれることがあるけど、答えは明確にNO。認証を取らずに「有機」「オーガニック」と表示することは禁止されてます。

表示ルールの全体像はパッケージ表示義務をまとめた記事で詳しく書いたので、合わせて読むと業界全体の規制が見えてきます。

ノンアルで有機JASを取るメリットは本当にあるのか

正直に書きます。費用対効果だけで考えると、有機JAS取得は割に合わないケースが多い。年間数十万のコスト、書類作成の手間、毎年の更新審査。中小のノンアルメーカーにとっては相当な負担。それでも取る理由は何か。

取材した工房の社長さんは、こう言ってました。「有機JASなしでオーガニックを名乗れない法律がある以上、海外輸出も国内のオーガニック市場も入り込めない。マーク自体の集客力じゃなくて、参入チケットなんです」。これが本質だと思います。マークが売上を直接3倍にするわけじゃない。でも、これがないと特定の市場には入れない。

特にEUや北米のノンアル市場を狙うなら、有機JASは橋頭堡になる。EUオーガニック認証と日本の有機JASは2010年に相互承認協定が結ばれていて、有機JAS取得品はEUに「Organic」として輸出できる。これが結構大きい。海外規制との関係性はEU新規則のノンアル表記まとめでも触れたとおりです。

国内市場での効果

国内のオーガニック専門店、自然食品店、ナチュラルローソンなどでは、有機JASマークの有無が棚取りの条件になることが多い。バイヤーさんに聞くと「マーク付き商品しか取り扱えない棚があるんです」と言われる。価格帯も一般品より2〜3割高く設定できるので、利益率の確保もしやすい。

もうひとつ、消費者の信頼獲得という側面。年々、オーガニック表示への不信感は高まってる。「無農薬」「自然派」みたいな曖昧表記が氾濫する中、第三者認証のマークは「ちゃんと審査を受けた証」として機能する。長期的にブランド構築するなら、ここは見過ごせない要素だと感じてます。

取得までの全体フロー:6段階で見る道のり

実際の取得の流れを、6つのフェーズに分けて説明します。私が複数のメーカーと認証機関に取材して、共通する手順を抜き出したものです。最短でも8ヶ月、平均で12〜18ヶ月かかると思って読んでください。

フェーズ所要期間主な作業
1. 事前準備1〜3ヶ月原料サプライヤー調査、社内体制整備
2. 認証機関選定2〜4週間登録認証機関の比較、見積取得
3. 申請書類作成1〜2ヶ月有機加工食品の生産行程管理者の申請
4. 書類審査1〜2ヶ月認証機関による事前チェック
5. 実地検査1日〜数日製造現場の立ち会い審査
6. 認証取得・表示開始1ヶ月程度認証書発行、ラベル製造、表示開始

この表だけ見ると簡単そうに見えるけど、実際は各フェーズで山ほどの作業がある。とくに3番の申請書類作成と、5番の実地検査が鬼門。ここで何度か差し戻されることが多くて、平均的なメーカーで2〜3回は修正を求められると認証機関の方が言ってました。

フェーズ1:事前準備が一番大事

意外なんですが、申請書類を書き始める前の段階が一番重要です。何をするかというと、まず原料の調査。たとえば有機JASのノンアルビールを作りたいなら、麦芽もホップも有機JAS認証品でないといけない。さらに、それを供給してくれるサプライヤーが安定して確保できるか。海外から輸入するならどのルートで、書類はどう揃えるか。

製造ラインも見直しが必要。一般品と同じラインで作るなら、洗浄手順や切り替えタイミングを明確に文書化しないといけない。専用ラインにするなら設備投資が発生する。この判断を最初にしないと、後で全部やり直しになる。

フェーズ2:認証機関選びで差が出る

日本国内には農水省が登録した認証機関が約60あります。OCIA Japan、アファス認証センター、ジャパン・サティフィケーション・コーポレーションなどが代表的。費用は機関によって結構違うので、最低でも3社は見積もり取ることをおすすめします。年間20万円のところもあれば、60万円超えるところもある。何がそんなに違うのかというと、検査員の出張費、書類審査の手厚さ、海外認証との連携体制などが理由です。

申請書類の中身:何を書かされるのか

ここからが現場の方が頭を抱えるパート。申請書類は「生産行程管理者」の認証申請として提出します。中身を簡単に紹介すると、こんな感じ。

  • 生産行程管理規程:原料受入から出荷までの全工程を文書化
  • 有機加工食品の生産行程管理者格付規程:誰がどの基準で認定判断するか
  • 生産行程管理担当者の経歴・資格証明
  • 使用原料の有機認証書写し(サプライヤー全社分)
  • 製造設備リストと配置図
  • 洗浄記録・切り替え記録の様式
  • 苦情処理と是正措置のフロー

全部で数十ページの書類になります。私が見せてもらった事例だと、A4で80ページくらいの分厚いバインダーになってました。これを一から作るのは無理に近いので、認証機関に雛形をもらうか、有機JAS取得のコンサルタントに依頼するケースが多い。コンサル費用は別途20〜50万くらい見ておくといいです。

生産行程管理担当者という役職

これは社内に必ず置かないといけない人。有機JAS制度を理解して、製造現場で実際にチェック業務をする責任者です。資格は必須じゃないけど、農水省が認める研修を受けた人が望ましい。研修は1〜2日で受講料は3〜5万円程度。中小メーカーだと、社長さんや製造責任者が兼任することが多いです。

実地検査で何を見られるか

書類審査をパスすると、いよいよ実地検査。検査員が工場に来て、半日〜1日かけて現場をチェックします。これがリアルに緊張するイベントで、取材した社長さん全員が「あの日はもう何も食べられなかった」と言ってました。

具体的に見られるポイントを並べると、こうなります。

  • 原料保管庫が有機・非有機で区分されているか
  • 製造ラインの洗浄記録が実際に運用されているか
  • 仕込み記録・出荷記録の整合性
  • 有機原料の入荷時の認証書確認手順
  • 従業員への教育記録
  • 表示ラベルの管理(誤表示防止)

とくに記録類は厳しくチェックされます。「規程に書いてあるのに実際の記録が残ってない」というのが一番ダメな状態。検査員さんが言ってたのは「書類は完璧でも、現場で1つでも記録の抜けがあったらアウト。書類と現場のギャップをなくすのが本質です」とのこと。これが結構耳に痛い言葉でした。

不適合が見つかったらどうなる

軽微な不適合なら、是正措置を取って報告すれば認証される。重大な不適合だと、再検査になることもある。再検査はもちろん追加費用が発生して、5〜15万円くらいの追加見積もりが来る。なので、初回で通すのが理想。事前に模擬検査をやってくれる認証機関やコンサルもあるので、不安なら使うといいです。

費用の全体像:いくらかかるのか

取材で集めた数字を平均化すると、初年度の総コストは80〜150万円くらいになることが多い。内訳はこんな感じ。

費目金額目安備考
認証機関への申請料10〜20万円初回のみ
書類審査料10〜20万円毎年発生
実地検査料15〜30万円毎年発生・出張費含む
コンサルタント費用20〜50万円初年度のみが多い
担当者研修費3〜5万円初年度のみ
原料切替コスト変動大有機原料は一般品の1.5〜2倍
設備改修費0〜数百万円専用ライン設置の場合

2年目以降は申請料が消えて、コンサル費用も基本不要になるので、年間40〜60万円くらいで運用できる。ただし原料コストは継続的にかかるので、ここをどう価格転嫁するかが経営の腕の見せ所になります。一般品と有機JAS品の価格差については価格差の構造を解説した記事と発想は似てます。認証コストは結局、最終消費者が負担する構造。

海外オーガニック認証との関係

有機JASを取ると、自動的にEUと相互承認されるのは前述のとおり。でもアメリカのUSDA Organicや、その他の国の認証は別途取得が必要なケースが多い。これを最初から知っておかないと、「有機JAS取ったから世界中で売れる」と勘違いして痛い目にあう。

各国の認証制度を比較した記事をUSDA・JAS・EUオーガニックの違いの解説でまとめてるので、輸出を視野に入れるなら必読です。基準が微妙に違っていて、たとえばUSDAは合成添加物の許容リストが日本より厳しい部分もあれば、緩い部分もある。一筋縄でいかない。

相互承認の落とし穴

EUとの相互承認も完全ではなくて、加工食品については追加の手続きが必要なケースがある。とくにアルコール度数が関わるノンアルビールやノンアルワインは、現地の酒類規制とも交差するので要注意。実際に輸出するなら、現地の代理店や輸入業者と早めに相談するのが正解です。

取得後の運用:取って終わりじゃない

認証を取った後も、毎年の維持審査がある。これが意外と忘れられがちなポイント。書類更新、記録の保管、年1回の実地検査、これを継続的にやっていかないと認証は維持できません。

取材したメーカーで印象的だったのが「最初の3年が一番きつい」という言葉。なぜかというと、社内に有機JAS運用の文化が根付くまで時間がかかるから。担当者が異動になったり、現場の従業員が「またこの記録か」と面倒くさがったり。社長が継続的に関与しないと、すぐに形骸化するそうです。

逆に3年続けば、もう日常業務に組み込まれて違和感がなくなる。「うちの会社のスタンダードはこの水準」と全員が思うようになる。ここまで来ると強い。ブランドとしても安定するし、新商品開発も同じ基準で進められる。

違反したらどうなるか

有機JAS表示の不正には厳しい罰則があります。法人の場合、最大1億円の罰金。実際に過去には複数のメーカーが摘発されています。多いのは「一部の原料が非有機なのに有機表示した」「他社の認証品を自社製品に流用した」というケース。意図的でなくても、記録の不備で「証明できない」となれば違反扱いになり得るので、現場の記録は本当に大事です。

取材して感じた、取るべき会社・取らなくていい会社

正直、すべてのノンアルメーカーが有機JASを取る必要はないと思ってます。私の感覚だと、こういう条件のどれかに当てはまる会社が取るべき。

  • 海外オーガニック市場への輸出を本気で考えてる
  • 国内のオーガニック専門流通に商品を載せたい
  • プレミアム価格帯(1本500円以上)で勝負したい
  • ブランドアイデンティティとしてオーガニックを掲げたい

逆に、コンビニやドラッグストアで100〜200円台の価格帯で勝負するなら、有機JAS取得のコストは回収できない。それよりも他の認証、たとえばグルテンフリーやヴィーガン認証のほうが響くマーケットもある。自社のポジションに合わせた認証戦略が大事です。

個人的には、もし自分が小さなノンアル工房を立ち上げるなら、初年度は有機JAS取らないと思います。まず売れる商品を作って、ブランドを育てて、3年目くらいから取得を本気で検討する。そっちのほうが現実的だと感じてます。

よくある質問

Q1. 有機原料を90%使ってる商品に「有機」と書けますか?

書けません。有機JASマークを付けるには、原則として水と塩を除いた原料の95%以上が有機認証品である必要があります。さらに、その商品を製造する施設自体が認証を受けている必要があるので、原料割合だけクリアしても表示はNG。「一部に有機原料を使用」みたいな表現も、誤解を招くとして指導対象になり得るので慎重にしてください。

Q2. 個人事業主でも申請できますか?

できます。法人格は必須ではありません。ただし、個人事業主だと運転資金が限られるので、初期費用80万円超を捻出できるかが現実的な壁になります。小規模事業者向けの補助金として、農水省や自治体が認証取得費用の一部を補助する制度があるので、申請前に必ずチェックしてください。最大で50%補助されるケースもあります。

Q3. OEM製造の場合、誰が認証を取りますか?

実際に製造する工場が認証を取得している必要があります。なので、自社ブランドでOEM委託する場合は、委託先の工場が有機JAS認証を持っているかを確認するのが先。すでに認証取得済みの工場に委託すれば、ブランドオーナー側の手続きは大幅に省ける。逆に、認証なしの工場に「うちの商品だけ有機表示で作って」と頼むのは不可能なので、最初のパートナー選びが命です。

Q4. 認証取得にかかる最短期間は?

体感的には8ヶ月が最短ライン。書類作成に慣れたコンサルが入って、原料も既に確保できていて、社内体制も整ってるなら可能。でも、ほとんどのケースで12〜18ヶ月かかります。とくに原料サプライヤーの認証書を集めるのに時間がかかることが多いので、見込みを甘く取らないほうがいい。新商品発売に合わせて取得を狙うなら、最低でも1年半前から動き始めるのが安全圏です。

Q5. ノンアルビールで有機JAS取得済みの商品はありますか?

国内では現状ほとんどありません。海外、とくにドイツ産の有機認証ノンアルビールがカルディや成城石井で見つかります。日本のメーカーで有機JAS取得済みのノンアルビールが少ないのは、有機麦芽・有機ホップの調達難易度と、コスト構造の問題が大きい。逆に言えば、ここに参入できれば差別化要素として強い。クラフトNAビールのメーカーから将来出てきそうな予感はしてます。

Q6. 有機JASマークなしで「オーガニック」とだけ書くのはダメ?

ダメです。これは結構誤解されてるポイント。「JASマークは付けない、でもオーガニックって文字だけ書く」は法律違反です。JAS法で「有機」「オーガニック」「organic」等の表示は有機JAS認証品のみに限定されてる。違反すると指導・命令・最終的には罰金まで進む可能性があります。「有機栽培の素材を使用」みたいな婉曲表現でも、消費者に誤認させる意図があれば景表法違反にもなり得るので、安易な表現は避けたほうが無難です。

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